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[作品データ]記憶の隠喩(2003-2004)12'[pf]

記憶の隠喩
ピアノのために
制作年:2003-2004 / 作品時間:12'

作品解説1(ショートバージョン)
この作品「記憶の隠喩」は、作曲者自身による同名のコンピュータ音楽を再作曲/再構成した作品である。コンピュータ音楽の原曲の中には、多くの日常音(水の音や足音、なにかを混ぜるような音など)を使用しており、それらの響きや雰囲気をピアノのためにできるだけ忠実に置き換えた。この作品では、数多くの特別な奏法を用いているが(ピアニストが椅子に座っていくところはほとんどない!)、それはできるだけ原曲に似た響きを探求した結果である。

作品解説2(ロングバージョン)

ある出来事、言葉、色、におい、音から、私たちは個別の想像が働く。同じモノやコトを経験したとしても、同じであることはない。この個別の想像は、私たちひとりひとりの記憶の違いからくるものだろう。そして、私たちの記憶は、常に、時間、新しい経験、他の記憶の影響を受け、更新されたり、変化したり、またある時は喪失したりする。全く新しい記憶になることもあるだろう。記憶?ヘ留まってくれない。記憶はつねに?ャ動的でうつろなものである。 〜中略〜 この作品では?A常に変化する記憶を開き、この作品によって開くことができる個別のうつろう記憶の隠喩になることを目指した。しかし、結局、全てのモノやコトが、ある特定な記憶の隠喩となりえる。この作品もその一部に過ぎないのだ。そして同時にこの作品からしか開くことのできない記憶の鍵もあるだろう。
「記憶の隠喩」(ミュージック・アクースマティック*のために)のための作曲者自身の解説文より抜粋引用

        
この作品「記憶の隠喩」〜ピアノのために〜は、作曲者自身による同名のタイトルをもつミュージック・アクースマティックを再作曲、再構成した。この作品は2つの楽章よりできている。電子音響音楽による原曲はA1-B-A3-C-A3-D-A4のロンド形式できており、ピアノ版のためには、そのうち第一楽章のためにB、第二楽章のためにDとA4を選んだ。

私のミュージック・アクースマティックの原曲には、多くの具体的な音(水の音、歩く音、なにかを混ぜる音など)を含んでいる。それらを器楽のためのエクリチュールに置き換えるとき、さらに音楽そのものの抽象度が強くなる。しかし、ある一つの同じ想像の世界 のことを表現している。

このように、ある一つの同じ想像の世界を、他の媒体のエクリチュールに置き換えることに、私はとても興味がある。ミュージック・アクースマティックを器楽のための作品に書き換えることー再作曲と私は呼んでいるーとは、映画を演劇のために創りかえることとちょうど同じである。元と同じ世界を引き継ぎながら、元と大きくことなるなにかを表現することだ。

* ミュージック・アクースマティック・・・電子音響音楽の中の1つのジャンルをあらわし、CDやテープなどの固定された媒体のためにつくられ、スピーカーを通して聴くことができる音楽の総称。主にフランス語圏で使用されている。他の言語圏では、テープ音楽、電子音楽等と呼ばれている。

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