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[作品データ]豊饒の海

豊饒の海   (旧:生命の海)
アクースマティック作品
2009, 1時間06分27秒, ステレオ


第1部〈ダイヤモンド〉[33'50]
1.支度 [6'15]
2. 炎と声 [4'10]
3. イン・モーション[10'49]
4. 秘密の時間 [3'43]
5. 輝きホロニクス[2'42]
6. 空と海 [6'08]

第2部〈マトリス〉[32'35]
7. 母なるホロニクス[6'52]
8. 呪文[7'24]
9. 即身[14'12]
10. 身体的精神[4'08]

"五大にみな響あり 十界に言語を具す 六塵ことごとく文字なり 法身はこれ実相なり"(空海《声字実相義》)

このアクースマティック作品《豊饒の海》は、全二部十場面で構成され、密教の宗教的世界観からインスパイアされた。「涅槃」や「無我」といった「空(くう)」の思想を、月球儀、完全な砂漠の平原に準えた、三島由紀夫の有名な四部作の小説からこのタイトルをとった。特に空海の思想を表現した二種のマンダラをもとにプランを練った。空海は八世紀に真言密教の設立し、即身成仏を説いた。即身成仏とは、水滴が大海にとけ込むかのように、人間がこの身のままで究極の悟りを開き、仏になるという教えである。このような仏教思想を象徴するために、地(ち)・水(すい)・火(か)・風(ふう)・空の五大とよばれる物質、価値の多様性と調和の認識、生と死、ノンヒエラルキーな身体と精神、そして永遠との繋がりなどを表出した素材音を中心に用いた。

第一部〈ダイヤモンド〉は、金剛界マンダラをイメージした六つの場面で構成されている。金剛界マンダラは精神的、理性的、男性的、永遠に滅びることのない認識、身体と欲望の肯定などを象徴している。仏教儀式で用いる華やかな金属系打楽器の連打によって全体に統一性を持たせた。第二部〈マトリス〉は、胎蔵界マンダラをイメージした四つの場面で構成されている。胎蔵界マンダラは、柔らかさ、物質的、感性的、女性的、慈悲、無限の展開、母的なるもの等を象徴している。アタック部分の緩やかな、柔らかいサウンドを用い、繰り返しの構造を中心においた。

このように空海の密教の思想に影響を受けた作品であるが、最後に言いたいことはいつも同じで"それは言葉では言えないが、体験は可能だ"(中沢新一・文化人類学)という全体性についてである。知覚と認識を支えているのは身体なのだから、私の音楽を皮膚感覚を通して、空間に具現化される内なる声を受けとってほしい。(檜垣智也)

演奏:竹下士敦(エレキギター)、泉川秀文(尺八、箏)、川口良仁(声)、檜垣智也(各種音具、シンセサイザー)
スタジオ:ホームスタジオ(モンタージュ、ミクサージュ)、大阪芸術大学のスタジオ(録音)

初演:FUTURA2009 国際アクースマティック・アートとメディア・アート・フェスティバル
2009年8月21日(金)、エスパス・ソベイラン(フランス・ドローム)
アクースマティック演奏:ヴァンサン・ロブフ(MOTUSの大アクースモニウムー76チャンネル/100スピーカ)

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