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永遠の夜である場所

永遠の夜である場所
Une place, la nuit éternelle

アクースマティック・ミュージック
制作年:2008年

作品解説
 1877年にエジソンが蓄音機を発明し、音を記録したことは、音がもともと存在していた空間と時間からの解放を意味しました。この新しい存在である”不在の音”の不思議さとおぞましさを人類が初めて経験してから、さらに音楽創作に応用するには、1948年(71年後!)のミュージック・コンクレートが登場するまで待たなければなりませんでした。それからさらに今年ちょうど60年経ましたが、“不在の音”による創作と思考は絶えることなく続き、私達のこの世界をさらに豊かに多様に把握させてくれています。

 美術評論家の椹木野衣さんは、アクースマティック体験が可能となるラジオドラマのことを「普段は昼という理性の光にかき消されて見えなくなっている、この世界のあらゆる場所に潜在して、たえまなく形を変える、永遠の夜である場所を聴取する具体的な方法」で「もっとも記憶や夢の世界に近いづいた創作の形式」と著書 で述べています。このようにラジオ形式にみることができる<見ることなしに聴く>体験は、アクースマティック芸術=録音芸術のそれそのものといえます。私はこのようなアクースマティックな体験を適確にとらえた椹木さんのように、理性によって見えなくなった世界を把握できる<永遠の夜である場所>に没入できるような体験の場を創りたいのです。

 さて、この作品はラジオとともにもう一つのアクースマティックな世界を支えている電話の音によってシーン分けされています。受話器の中の音のだけで成立する場所では、プライベートな会話、編集された記憶や虚ろう夢、抽象的な音の運動などが、自己と他者、仮想と現実を区別なく提示されます。シーンはそれぞれはっきりと異なるイメージや質感を表出しますが、恣意的に併置されたシーンの中では、<この今><ここ>で聴いていることが、虚構かどうかの問うこと自体、意味を持たない没入性を生み出していきます。

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